平成11年7月
−シックハウス対策の新提案−
シックハウス症候群
ここ数年、建材等から放散する揮発性有機化合物(VOC)などが原因で健康被害を起す、いわゆるシックハウス症候群が社会問題になっています。平成8年7月には厚生省、建設省、通産省、林野庁や関連業界等からなる「健康住宅研究会」が組織され、こうした室内空気汚染対策が検討されました 。
研究会が平成9年4月に発表したガイドラインでは、安全な居住空間を実現するために当面優先的に配慮されるべき優先取組物質として、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンの3物質と木材保存剤、可塑剤、防蟻剤の3薬剤が選定されています。
このうちホルムアルデヒドは木質材料にとって重要な物質であり、合板、集成材、パーティクルボード、MDF等に使用される接着剤に多く含まれています。室内においてホルムアルデヒドの気中濃度が数ppm以上に達すると異臭を感じ、目がちかちかする、喉が痛むといった症状が出ます。(表−1)
なお、厚生省は平成9年6月にホルムアルデヒド室内濃度の指針値を0.1mg/m3以下と定めました。ちなみに0.1mg/m3とは、室温23℃の下で、約0.08ppmに相当します。気中濃度1ppmとは、1m3の空気中に1cm3 の物質があるということです。

VOCカット”徳島すぎ内装材の開発
こうした中、県内企業が住宅のリフォーム市場を狙い、簡単に施工できる内装材製品を開発しました。その性能試験を当センターと共同で行なったのでご紹介します。
試験に供する製品は、相生町国産材加工生産協同組合が「四国の森シリーズ」で提案している内装用スギ羽目板です。そして、この製品には次のような特徴があります。
これまでホルムアルデヒドの放散を抑えるため様々な商品が提案されていますが、これは、無垢材を建材の上に直接貼ることで、ホルムアルデヒドの放散を抑えるといった、いわば発想の転換を図ったユニークなものです。

材料表面からのホルムアルデヒドの放散
さて、今回の試験内容を説明します。まず表−2のように3タイプの試験体をつくり、それぞれのホルムアルデヒド放散量を測定しました。 温湿度の条件を一定にそろえるため、低温恒温恒湿器(温度23℃、相対湿度45%)内に24時間材料を放置します。材料表面から放散したホルムアルデヒドをデシケーター内に充満させた後、簡易型ホルムアルデヒド分析装置(島津製作所製シルセット)で溜まったホルムアルデヒドを補集します。 その結果、合板からの放散量が0.34ppmだったのに対し、合板をスギ板で被覆した場合の放散は0.07ppmと抑えられました。ホルムアルデヒド放散量は79%減少したことになります。またスギ板自身からも0.06ppmの放散が見られました。このことから、合板にスギ板を被覆した場合の放散量0.07ppmのほとんどはスギ材に含まれるホルムアルデヒドではないかと考えられます。他にもスギからホルムアルデヒドの放散が見られるとの報告がありますが、こうした自然界のホルムアルデヒドは、人の健康を損なうものではないとされています。

実大モデル居住空間での施工試験
つぎに実際の居住環境での性能を把握するため、林業総合技術センター敷地内にある簡易作業舎(床2.6m3.6m、壁高さ2.5m )を用いることにしました。

この室内に合板を全面施工した場合と、合板の上からスギ製品を全面に貼った場合について室内のホルムアルデヒド気中濃度を測定します。開口部(入り口、窓)を閉鎖し、シルセットで4時間ごと(9時、13時、17時、21時)のホルムアルデヒド気中濃度値を測定しました。(表−3)
その結果、合板のみを施工した場合には、午前9時に0.07ppmだったものが、気温の上昇とともに気中濃度は上昇し、午後1時には0.32ppm、午後5時には0.43ppmと高い濃度となっています。
ところが、合板の上にスギ板を全面に貼った場合、午前9時には検出されず、午後1時には0.07ppm、午後5時には0.08ppmと微増したものの、午後9時には0.06ppmと微減し、厚生省の定める指針値0.08ppmをクリアしました。午後5時の時点で、合板からのホルムアルデヒド放散量を81%抑制したことになります。
実際の住宅等では、こうした製品の施工とあわせ、ユーザーがまめな換気を心がけることで室内空気が清浄に保たれ、有効なシックハウス対策となります。
最後に、国産材需要開発センターではこうした新商品の試作や様々な性能評価試験ができますので、興味のある方は気軽にご相談ください。
●内容に関するお問い合わせ先
木材利用科 網田克明
TEL 088-632-4237 FAX 088-632-6447